引越しや生活の変化の中で、夫の様子に少しずつ違和感を覚え始めた頃の話は、若年性認知症と診断されるまで①予兆で詳しく書きました。
病院選び
若年性認知症に特化した病院を探すのは正直とても困難です。
精神科や心療内科に「物忘れ外来」が併設されていれば、うつ病や精神障害、認知症など幅広い可能性から診てもらえるのではないでしょうか。
…とは言いつつ、当時の私は「脳の血管の問題かもしれない」という自己判断や、「夫の父が通っていた病院だから大丈夫だろう」という安易な理由から、口コミでは悪評も多い病院を選んでしまいました。今思えば冷静さを欠いていたと思います。
こうして私たちは 脳神経内科I を受診することになりました。
初めての受診
受診には基本的に付き添いが必要です。
これまでの経緯を私が説明したあと、夫は別室で検査を受けました。
長谷川式の認知症テスト
MRI
血液検査
歩行検査(水頭症の確認)
その結果「認知症の疑いが濃厚」との判断。
さらに確定診断のため、日をあらためて、大きな病院でシンチ検査(脳血流の検査)を受け、最終的に アルツハイマー型認知症 と診断されました。
ショックでしたが、半分は予想していた結果でもありました。
生活がグレーに変わった日々
よく「目の前が真っ暗になる」と言いますが、私の場合は世界がすべて グレー に感じるようになりました。
空気は重く、音も鈍く、不安が押し寄せる混沌とした毎日。それが半年以上続きました。
若年性認知症は進行が早く、平均余命は10年とも言われています。
夫はいつまで元気でいられるのか。体調が万全でない私が、金銭面生活面で夫をサポートしていけるのか。どこに住むのが夫にとって最善なのか。・・・夫は私のことを忘れてしまうのだろうか。
夜、電気を消してから声を押し殺して泣く日々。時々、夫のすすり泣きが聞こえることもありました。お互いに涙を見せたくなくて…。
無理にでも笑顔
そんな時に思い出したのは、夫に先立たれた友人や上司の奥様A子さんのことです。
がんの闘病を続ける夫を、最後まで支えた奥様の笑顔。その笑顔の印象が強烈で、私たちも「笑顔で立ち向かっていきたい」と思うようになりました。
それで夫と二人で「A子スマイル」と称し、笑顔にらめっこをする習慣を作りました。
誰かがとびきりの笑顔を見せると、不思議と自然に笑えてきますよね。
口角を上げるだけでも気持ちは変わります。今でもしんどいときに、夫が私に向かってとびきりスマイルを見せてくれると、「まあいっかーーー」と心がほぐれます。
医者とのやり取り
最初のI医師は初診時こそ丁寧でしたが、診断がついた途端、夫ではなく私に向かって説明や質問をするようになりました。
私は「本人が主体であること」を大事にしたかったので、夫に話していただくようお願いしました。
しかし医師は苛立ち、
「奥さん、あなたに話してるんだよ!どうせ本人はすぐ忘れちゃうんだから!」
といった言葉をぶつけてきました。

「本人に聞いてください」とお願いした時のこと
尊厳や残存能力を無視した態度にショックを受け、今でも思い出すと腹立たしく感じます。
良い出会いも
一方で、その後紹介を受けた A先生との出会いは大きな救いになりました。
立派な経歴をお持ちの先生でしたが、実際にお会いすると、夫を主体にきちんと説明してくださる方でした。
「認知症という診断が、本人を“患者扱い”で固定してしまうことがある。でもそうではなく、一人の人間として尊重する姿勢が医療者にこそ必要なのではないか」
そう強く感じました。
その先生との出会いについてはまた別の時にお話しさせてください。


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