若年性認知症コーディネーターの方が、相談に行ったとき、夫に向かって
「毎日仕事に行っていたら本当に疲れますよね?大丈夫ですか?」
と声をかけてくださいました。
その時は、「認知症の方が疲れる」という感覚はあまり意識していませんでした。
でもよく考えてみると、記憶したり理解したり判断したりするのが難しい分、他の人より何倍も脳を使わなければならない状況なんですよね。
外から見るとゆったり過ごしているように見えても、
実際には頭の中でフル回転していることも少なくありません。
脳はフル稼働:軽自動車の例え
まるで、普通自動車がスイーーっと先を行くのに対して、
軽自動車がアクセル全開で坂道を登っているかのよう。
速度やパワーは感じられなくても、内部のエンジンはフル稼働。
認知症の方も、見た目は静かでも、会話を理解したり状況を把握したりするために脳はとても頑張っているのだと思います。
頭の中はぐるぐる回転:夫の場合
夫は、自分の考えを言葉にするのが少し苦手です。
頭の中が言葉や情報でいっぱいになっている中を、どうにか回り道しながら答えを出しています。
例えば…
💭 「今日は月曜。何をすればいいかな。ゴミは今日だっけ?」

簡単な内容でも、2〜3分かかってやっと言葉にできることがあります。
忙しい時はついイライラしてしまうこともありますが、考えていないから言えないのではなく、
一生懸命考えて言葉にしてくれているんだと改めて感じます。
だから私は、夫の言葉がなかなか出てこないとき、自分にこう言い聞かせています。
「やさしく、やさしく、怒らない、まつよー、まとうよー、深呼吸!」
時間がかかるとわかっている時は、耳を傾けつつも自分の手は止めずに動かすようにしています。
間違っていても言葉に出してくれれば、その単語を拾って意図を汲み取り、手伝うことができます。
少し手伝うだけで、その後の会話がスムーズになることも多いです。
表面的には静かでも、実は頑張っている
夫は大勢での会話中、黙っていることが多いです。
「頭を使っていないのかな」と思ってしまいそうになりますが、後から
💬 「あのとき◯◯さんがこんなこと言ってたね」
と話すことがあります。
その瞬間、ちゃんと聞いて理解しようと必死に頭を働かせていたんだと気づかされます。
また、外出先から帰るとぐったりしていることもあります。
楽しい時間を過ごしても、帰宅後は疲れている——
それも、見えないところで脳のエンジンを回し続けていた証拠かもしれません。
気をつけていること
こうした経験から、夫と過ごすときに意識していることは次の通りです。
- 疲れていそうなときは、5分でもいいから目を閉じて休憩タイム
- 「考えていない」と思わず、見えない頑張りを想像する
- 単語から何を言いたいか予測して手伝う
- 時間がかかることを前提に待つ
認知症の方は、表面上は穏やかでも、その裏で脳はずっと働き続けています。
だから、「疲れやすさ」や「休むことの大切さ」に目を向けられるようになりました。
まとめ
認知症の方は、一見何もしていないように見えても、
軽自動車が坂道を登るように、一生懸命エンジンを回して頑張っています。
だからこそ、私たちが意識したいのは
- 無理をさせない
- 休む時間も大事にする
そのうえで、人との関わりや楽しい時間を持てると、本人にとっても家族にとっても大きな力になります。
見えない頑張りに気づき、寄り添う——
それが、認知症の方と向き合ううえで大切なポイントなのだと思います。
